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女と雌蛇

女と雌蛇 解題

 

タラションコル・ボンドパッダエ(1898-1971)の初期の短篇。月刊誌『デーシュ []』(ベンガル暦1341年秋季特別号、西暦1934年のおそらく10月初頭出版)に掲載されました。

前回掲載の「ベデの女(ベデニ)」では、蛇を捕えその芸を見せることを生業のひとつとするベデという出自集団(ジャーティ)の話を取り上げました。この短篇の主人公、「(ちんば)のシェーク」は、ベデではなく、ふつうの極貧のイスラーム教徒ですが、蛇の扱いが上手で、毒蛇に噛まれたり悪霊に取り憑かれたりした人を呪術によって治療する呪術師(オジャ)として、また縁日などで太鼓と瓢箪笛の音色に合わせて蛇の踊りを見せる蛇使いとして、収入を得ています。

蛇使い用の楽器のことが書かれています。「両面太鼓」と訳したのは、ベンガル語でビション=ダキ [「恐ろしい(音を出す)小太鼓」の意] と呼ばれる、鼓の形をした小振りの両面太鼓で、蛇使いの他、蛇の女神モノシャ(マナサー)神の祭祀で歌物語を歌う時の伴奏にも使われます。また、「瓢箪笛」は、ベンガル語でトゥブリ=バンシ [「瓜の竹笛」の意]、ヒンディー語でプンギーと呼ばれる、気鳴用のふくべがついた笛のことです(竹笛の下に瓢箪をつける中国や東南アジアの瓢箪笛とは構造が違い、瓢箪の下にドローン用と旋律用の二本の笛を差し込む構造です)。

 

この作品では、跛と、彼に捕えられた雌のケウテ蛇(コブラの一種)の間の、親密な交歓が描かれます。タラションコルの観察力は、人間だけでなく動物に対しても透徹しています。『船頭タリニ』所収の短篇「ラカル・バルッジェ」の解説で、猫の描写について書いた中で、「タラションコルが描く動物は、悲喜愛憎などの根源的な感情を、人間に代わって何の飾り気もなく盲目的に表現する存在である。」と記しました。これはこの作品の雌蛇にあてはまりますし、次回掲載予定の「黒い山(カラパハル)」の水牛にもあてはまります。

 

なお、作品の中程で、跛が雌蛇を「娶った」後、歌う歌があります。この歌は、ラーダー=クリシュナ神話に基づいています。ゴークラ村に牛飼いとして住み、人妻のラーダーと愛の戯れをしていたクリシュナ神が、生まれ故郷であるマトゥラーに戻ることになり、そのことを知ってクリシュナ神との別れを嘆き悲しむ、ラーダーの立場から歌われています。物語の文脈では、ジョショダをラーダーに、また彼女から離れて雌蛇との愛に走る跛をクリシュナに見立て、ジョショダの立場になりかわって歌った歌、ということになりましょう。



 

女と雌蛇

タラションコル・ボンドパッダエ

 

野焼きの竈の中から、(ちんば)のシェークは焼き終わった煉瓦を取り出していた。「(ちんば)のシェーク」の本当の名前が何か、知る者はいない。彼自身も覚えていないのかもしれない。いつしか幼少の時に左足が折れて以来、彼は「(ちんば)」の名で通してきたのだ。ただ足がびっこをひいているだけではない。若い頃放蕩を繰り返したため悪疾にかかり、彼の鼻は潰れている。あるべき所に見えるのはおぞましい空洞ばかり。その後、今度は天然痘にかかり、その痕が全身を覆って醜い彼をさらに凄まじい姿に仕立て上げた。

脇目もふらず、跛は煉瓦を取り出していた。

すぐそこを、オダイ、即ちオワエド・シェークが、牛車に乗って近づいてきた。つがいの牛の尻尾を捻ってけしかけると、彼は唄い始めた ―― 卑猥な唄である。だが突然、その唄のリズムが崩れた。つがいの牛が、不意に泡を喰らって立ち止まったのだ。オダイは前に烈しくつんのめり、唄うのをやめて声を荒げた、この牛野郎、おれが言う前に ……

凄まじい怒りに駆られ二頭の牛に罰を与えようと叩き棒を手に取った。牛たちも絶え間なく息を吐きうなり声を上げていた。オダイはだが、棒を振り下ろす前に叫び声を上げた、おおい、跛、蛇だ …… 蛇だぞ!

オダイの牛車の真向かいに、一匹のまだ幼い蛇が、鎌首をもたげて少しずつ身体を揺らしていた。オダイは牛車から跳び降りると煉瓦をひとつ拾い上げた。

いっぽう跛は足を引き摺って走りながら叫んだ、殺すんじゃねえ、オダイ、殺すんじゃねえぞ。おれが、今、行くから!

オダイは、手にした煉瓦をそのままに、こう呟く、まったく、何て豪勢な蛇だ! 辰砂のように真っ赤な顔をしていやがる! それに、頭の傘の張り具合の、見事なことときたら! おや …… 逃げていくぞ …… 逃げていくぞ、おい! 急げ!

蛇はいまや地を辷るように逃げていた。だが、まっすぐ跛に向かってである、オダイを背後において逃げおおせようとしていたのだ。跛の姿は目に入っていなかった。

跛は叫んだ、オダイ、おめえの叩き棒を投げろ。畜生、煉瓦の間に逃げ込みやがった! 暁蛇(ウドエナーグ)だぜ、めったに手に入らないやつだ。捕まえたら、いい実入りになったのによ。

 

跛は蛇の呪い師(オジャ)である。呪い師(オジャ)であるだけではない。蛇を使って芸を見せることもする。家の軒下には、蓋を閉じた大きな煮炊き用の土釜が、彼の手でいくつも吊してある。その中に蛇たちを閉じ込めているのだ。蛇たちが老いさらばえると遠くの野原に捨ててくる。死んでしまう蛇もいる。蛇がいる間は、跛は日雇い仕事をしない。そうした時には、両面太鼓と瓢箪笛を手に、彼は蛇の踊りを見せて回るのである。実入りも悪くはない。だがそんな時は大麻や阿片を吸う量も増えるのだ。時には酒を飲むこともある。そのため、蛇たちが息絶えると同時に、跛はまた、頭上に藁で編んだ環を置き、その上に竹籠を載せて、家を出る。裕福な家々の門口に立つと、醜いその顔を少しだけ中に差し伸べて呼ばわる、日雇い仕事、いらんかね〜  …… 日雇い仕事!

声に合わせてお世辞笑いをするのだが、おぞましいまでに恐ろしく見える彼の顔は、その時ますますその凄みを増す。日雇い仕事を請け負うと、彼は骨身を惜しまず力を注ぐ。そうした時彼は手抜くことはしない。仕事がない日には、彼は籠を肩に担いだまま物乞いを始める。その日その日の実入りに応じて少しばかりの大麻や阿片を買う。お釣りがくればどぶろくをいくらか引っかけ、家に戻るとジョベダ・ビビ [イスラーム教徒の「奥様」への尊称] の足に縋って泣きつき、こう言うのだ、おれの手に落ちたばっかりに、おめえはいつまでたっても、こんな惨めな有様だ! 飯を食わすこともできねえ! おめえを台無しにしちまった!

ジョベダは笑いながら夫の頭を撫でて言う、ちょっと、あんた …… バカな真似はよしなさいよ。さあ、放して私を …… 近所からお米をもらってくるから。

跛の涙はますます止まらなくなり、今度はジョベダの首に縋りついて言う、サリーの一枚も買ってやることができねえ。着古しの布きれを巻いたまま、おめえはその日暮らしだ。

 

こんな話はさておき。翌日の早暁、跛は煉瓦の山の傍に姿を現した。手には小振りの棒が一本。脇には籠を一つ抱えている。正面の東の地平にはうっすら暁光が差し始めている。樹間に止まった鳥たちはしきりに鳴き声を上げている。村のヒンドゥーの神を祀るどこかの寺では朝の神の慰撫(アロティ)を告げる法螺貝の音が響いている。とりわけ高く盛り上がった煉瓦の山の上にすわり、跛は四囲を、注意深く目を光らせて見渡していた。

暁の紅が次第に色濃く大きな広がりを見せてきた。その色の照り返しで、山積みになった焼き煉瓦もその色をさらに赤く染めた。跛がまとっている汚れた衣類までも赤色の染みを帯びた。彼は立ち上がった。

あれだ …… あれに違いなかろうが?

少し離れた荒地の上に見えるのは、例の幼い蛇に違いない。東の空に向かって頭をもたげ、鎌首を揺らめかして踊っている。暁の血のような光を浴びて、その色は深紅と見紛うばかりだ。頭の傘に刻まれた漆黒の菱形の印は、その赤色に囲まれてものの見事な壮麗さを醸し出している。蝶の赤い翼に刻まれた黒色の線のようにその美しさは胸に沁みる。跛は恍惚となった。思わずひとり、ああ! と感嘆の声を漏らした。

その後、そろそろと歩を進めた。幼い蛇は昇る太陽を迎えるのにすっかり心を奪われ、跛の足音が近づいてもその踊りは止まなかった。彼がすぐ近くまで来て、蛇は初めてハッと気づき振り返り見た。次の瞬間、うなり声とともに鎌首を投げた。だがその頭を再びもたげることはできなかった。跛が左手の棒で素早くその頭を押さえつけたのだ。右手で蛇の尾をつかみ、二度ほどその体を見渡して言った、雌蛇だ!

 

六ヵ月あまり後。大麻の売店から戻ると、跛はジョベダに言った、これを見ろよ。

中庭の土を竹箒でならしながらジョベダは答えた、何よ?

下衣の結び目を解くと、跛は小さなキラキラ光るものをひとつ取り出して掌の上に載せ、ジョベダの目の前に掲げた。それは小さなミニ ―― つまり鼻につける装飾である。

ジョベダは尋ねる、こんなに小さなミニを、どうするの?

跛は笑って答える、ビビにつけてやるんだ。

ジョベダは二の句が継げなかった。笑みを浮かべながら跛は部屋の中に入った。そうして、一匹の蛇を首に巻きつけて出て来た。例の雌蛇である。この数ヵ月のうちにさらに少し大きくなった。だがあの時の精気はない。穏やかな敵意のない様子で、ゆっくりと鎌首を少しもたげながら跛の首や肩にまとわりついている。ジョベダは言う、あんた、もう止めなさい。いくら元気がないからって、毒蛇は毒蛇でしょ。こいつら、信用できないわ。

跛は笑って言う、この毒牙が信用できない、ってわけか。だがな、こいつらにも愛情ってものがあるんだぜ。毒牙は取ってしまってもうないが、別の歯は残っているだろう? だがおれに嚙みつきはしないぜ。どこかのいい娘みたいに、ビビのやつ、おれにまといついているだろう? ―― こう言うと、彼は蛇の両の唇を押さえつけて、その口にひとつ接吻をした。

ジョベダは驚かなかった。と言うのもこの光景は彼女にとって目新しいものではなかったからだ。彼女はだが不快を露わにして言った、ああ、胸糞悪い! あんたには嫌悪ってものがないの? 何度よしなさいと言ったらわかるのかしら?

この言葉に跛は耳を貸しすらしなかった。彼は言う、そら、そら、どんな具合におれの腕に絡みついているか、よおく見ろよ! あのな、雌蛇と雄蛇がじゃれ合う時は、ちょうどこんな具合に絡み合うんだぜ。見たことがあるか? ああ! そりゃあまったく、豪勢な見物(みもの)だぜ!

ジョベダは言う、そんなもの、私が見てどうなるって言うの。あんただけでたくさんよ。でもあんた、そんな風にふざけていると、そのうちそいつが、あんたのそのじゃれ合いとやらにけりをつけることになるわよ!

跛はその時、一本の針を取り出してビビの鼻に穴を開けようとしていた。足指で蛇の尾を押さえ、左手でその頭を押さえつけた。そして右手に針を取って鼻に穴を開け、そこにミニを押し込んでから放してやった。苦痛と怒りにうなり声を上げながら、ビビは何度も鎌首をもたげて跛に噛みつこうとした。手籠を楯のように構えてビビの攻撃をかわしながら彼は言う、怒るんじゃねえ、ビビ、怒るんじゃねえ。おめえがどんなに美人に見えるか、よく見るんだ! おい、ジョベダ、鏡をよこしな! こいつに、一目自分の姿を見せてやるんだ!

イヤだわ、私。

よこせよ、この通り、頼むから! 自分の姿を見てやつがどうするか、見てみようぜ!

ジョベダは夫のこの頼みを無視することができなかった。彼女は鏡を取りに部屋の中に入った。

跛は言う、ついでに辰砂をひとつかみ、持ってきてくれよ。頼むぜ。

ジョベダは部屋の中から聞いた、 何ですって? どうするつもりなの?

すっかり興に乗った笑い声を上げると、跛は言う、 来て見ればわかるよ。いまは言えねえ。

ジョベダは鏡と辰砂を持って来ると、少し離れてそれを置いた。跛は巧みにビビを捕らえ、一本の棒の先に辰砂を載せると、その頭に一本の赤い線を描いた。そうしてはあはあ笑い声を上げて言う、こいつをおれは娶ったんだよ、ジョベダ。これでこいつは、おめえの後妻だ。

続けてビビに向かって言う、おい、おい、ビビ、おめえがどんなに豪勢に見えるか、よおく見るんだ! ビビを放すと、彼は鏡をその目の前に置いた。そして、両面太鼓を叩きながら、鼻がかったガラガラ声で唄い始めた ――

 

  知らなかった こんなことに なろうとは

ケシュト様が ゴクル村を離れ マトゥラーにお行きになるとは

  ああ 知らなかったわ ……

 

さらに数ヵ月後。

雨季のさなか、凄まじい嵐が見舞った。跛はどこに出かけたのか、あまりの雨風に家に戻れないでいた。ジョベダは家の中に、何か得体の知れない匂いが漂うのを感じた ―― 匂いは微かだ。だが、ほんのり甘く、どこか生々しい。あちこち探し回ったが、彼女にはその正体がまったくわからなかった。

二日ほど経って跛が戻った。水の神に卑猥な罵言を浴びせると彼は言った、何か食わせてくれや、ジョベダ。すっかり腹が減っちまった。

ジョベダは水に浸した冷や飯を大皿に入れて部屋まで運んできた。足についた泥を洗い終わって部屋に入るなり、跛は言った、おいジョベダ、何の匂いだ、これは?

訳がわからないのよ、あんた。もう何日も前から、この匂いが家にこもっているのよ。

跛は黙ったまま、しきりに鼻から息を吸い込んで匂いの正体を突き止めようとしていた。あちらこちら歩き回った後、彼はビビの籠の側に立った。人間の足音を聞いて、雌蛇は籠の中でうなり声を上げた。

ふーむ!

ジョベダは気負い込んで尋ねる、何なの、いったい?

ビビの体の匂いさ。雌蛇だろ。雄蛇と(つが)う時が来た、というわけだ。この匂いを嗅ぎつけて雄蛇がやって来るんだ。

ジョベダは驚愕した。まったく、お手上げだわ。勝手になさい。さあ、さっさとご飯を食べて!

飯を食べながら跛は言った、あいつを野原に放してやらないと。こんな時は捕まえておくわけにいかねえんだ。

彼は最後に深いため息をついた。

ジョベダはホッと安堵の息を吐くと言った、それがいいわ、あんた。あの蛇、私、見ただけで虫酸が走るの。死んだ蛇がこんなにたくさんいるのに、あの蛇ときたらくたばりもしないんだから!

飯を食べ終わると、跛は籠からビビを取り出した。その頭を押さえつけると、彼は際限なく睦言を囁いた。

ジョベダは言う、 ほら、あんた、しばらく削らなかったせいで、牙が生えてきたわよ。それに、何でそんなにいちゃいちゃするの? 早く行って、放して来なさいよ。

跛は言う、そら、そら、見ろよ、おれの腕に絡みついて、離れようとしないんだぜ!

午後になると、跛は意気消沈してすわっていた。ビビを近くの薮の中に放して来たのだ。

ジョベダは言う、何て格好ですわってるの? 大麻でも吸ったらどうなの?

ビビのことを思うと、苦しくて、なあ。

ジョベダは笑って言う、ばかばかしい! まったく、聞いてられないわ!

いいや、ジョベダ。おれは胸が苦しくてならねえんだよ。

ジョベダはそれを聞くと夫の横に腰をおろし、慈しむように首に抱きついて言う、どうして? 私のことが、いやなの?

愛情をこめて彼女に接吻すると跛は言う、ジョベダ、おめえがいてくれたおかげで、おれはこれまで何とかやってこれたんだ。おめえは、おれの命より大事だよ。

と、ジョベダが声を上げた、そら、そら、ビビが戻って来たわ! 見なさい …… 溝の中よ!

水捌けのための溝の中を、ほんとうにビビが、鎌首をもたげて動き回っていた。

跛は立ち上がろうとしながら言った、 捕まえてやる、ちょっと待て。

ジョベダは夫を力づくで押さえつけて言った、ダメよ!

続けて声を荒げ、叫んだ、出て行け! 出て行け! とっとと失せろ!

左手で乾いた牛糞をひとつ投げつけて、ビビに命中させた。蛇は怒り狂って何度も地面に鎌首を打ちつけると、徐々に溝を通って外に出て行った。

 

ちょうど真夜中時だったに違いない、ジョベダが叫び声を上げながら起き上がった、あんた、起きて! 起きて! 何かが私に噛みついたの!

跛は慌てて起き上がり、明かりをつけて見ると、ほんとうに、ジョベダの左足の指に、一滴の血が水の滴のように揺らめいている。

ジョベダは再び叫び声を上げた、ビビ …… あんたのビビが私を嚙んだんだわ! ほら見なさい!

飯炊き釜の周りに沿って、雌蛇はゆっくりと這い進んでいた。跛は急いで立ち上がり、蛇を籠の中に閉じ込めると言った、もしもジョベダが助からなかったら、おめえも容赦しねえからな!

ジョベダはだが、助からなかった。日の出とともに彼女の身体には死の徴候が現れた。頭髪を引っ張るとカサカサ音を立てて抜け落ちた。呪い師(オジャ)たちは去って行った。おぞましい顔を悲しみに曇らせて、跛は枕元にすわっていた。

老練の呪い師(オジャ)の一人は言った、おまえも死ぬところだったぜ、跛。命拾いしたな。やつらの怨念は凄まじいからな。たぶんおまえを嚙みに来たんだよ。

涙を湛えた目で彼の顔を見つめ、彼は首を横に振って言った、いや、そうじゃねえよ。

 

跛は乞食遊行者(ファキール)になった。彼の家屋は廃墟と化した。跛の家の横に人が往き来する道があったが、その道はいま閉ざされている。そちらを通る者はもはや誰ひとりいない。蛇に噛まれる危険がある、との噂である。そこに棲む一群の蛇は性質の悪いことで知られている ―― 暁蛇(ウドエナーグ)である。明け方、日が昇る頃、赤色の蛇が鎌首を揺らしながら踊っている姿が見られる。

跛はビビを殺すことができなかった。放してやったのだ、こう言いながら ―― おめえひとりが悪いんじゃねえ。これが女の(さが)というものよ。ジョベダもおめえには、我慢ならなかったんだ。



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プロフィール

bengaliterature

Author:bengaliterature
大西正幸(おおにし・まさゆき)

東京大学文学部英語英米文学科卒。1976~1980年インドに留学。ベンガル文学・音楽などを学ぶ。オーストラリア国立大学文学部言語学科にて、ブーゲンビル(パプアニューギニア)の少数言語モトゥナ語の記述研究でPh.D.取得。名桜大学(沖縄)教授、マックスプランク研究所(ライプツィヒ)客員研究員、総合地球環境学研究所客員教授などを経て、現在は同志社大学文化遺産情報科学調査研究センター嘱託研究員。専門はベンガル文学・口承文化、記録・記述言語学、言語類型論。

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